2回目のギターねた
ギターの木材と音の関係については以前から興味がありましたが、ネットを
見ていると
かなりいい加減なことを書いてあるものが多いので、特にスチール弦のアコースティックギターの木部の材について私の貧弱な知識と数少ない資料を基に自分な
りに整理してみます。
(ただし、今回は敢えて材と音との関係には言及しません)
ギターの各部名称です。(我が愛機YAMAHA LL-15D)
スプルースは松じゃないし、シダーは杉じゃない !!
トップ材(表板)は共鳴板とも呼ばれ、ギターにとって最も重要な部分と言っても過言ではありません。
音の鳴り方や響きに大きく影響します(もちろん音質にも影響しますが)。
トップ材として圧倒的に多く使われる材はマツ科トウヒ属のスプルースです。
スプルース=松 という人がいますが、マツ科というだけで松ではありません。
例えるなら、桜やリンゴ、桃、更にはイチゴなどもバラ科の植物ですが、何れもバラとは全く違うものです。
スプルースには、主な産地により
アディロンダックスプルース
シトカスプルース
イングルマンスプルース
ジャーマンスプルース
など様々な種類があり、それぞれ性質も違います。
アディロンダックスプルースやドイツ産のジャーマンスプルースは稀少で入手困難になっています。
最も一般的に使われているのはシトカスプルースという材です。
現在カタログで単にスプルースと表記されている場合はほとんどこのシトカスプルースです。
シトカというのはアラスカにある市郡の名前ですが、産地はアラスカからカリフォルニア北部くらいまでで、比較的入手性は良いようです。
また、北海道などに分布するエゾマツもマツ科トウヒ属でスプルースの仲間になります。
(ですからマツと名前に付いていますが厳密には松ではありません。
本州などで一般的に松と呼ばれるアカマツやクロマツはマツ科マツ属の種で純粋に松です。)
エゾマツにはアカエゾマツと一般的にエゾマツと呼ばれるクロエゾマツがありますが、クロエゾマツは楽器には向いていないようで、ギター材でエゾマツと言えばアカエゾマツのことを指します。
最近は良い赤エゾマツ材は入手困難のようです。
アカエゾマツは上田市丸子の超有名なギター職人(最近はルシアーと呼ぶら
しい)も好んで使ったり、かつてはヤマハでもよく使われていました。
昔のヤマハのカタログにはハイエンド機種には、「トップ材:最高級エゾマツ単板」など
と表記されていました。
ちなみに私の愛機であるヤマハLL-15Dのカタログ表記は「表板:高級エゾマツ単板、裏・側板:高級パリサンドル単板」でした。
シダー(セダー)と表記される材を使った物もあります。
正式にはウェスタンレッドシダーと言い、スプルースよりも柔らかいため、スチール弦ギターよりもクラシックギターなどのナイロン弦ギターに使われる割合が多いようです。
シダーは日本語では「杉」と訳される場合が多いのですが、元々はヒマラヤスギ(スギと付くがマツ科ヒマラヤスギ属でスギでは無い)のことをシダーと呼んでいたものをいつしかヒノキ類などを総称してシダーと呼ぶようになったそうです。
ギターに使うシダー(ウェスタンレッドシダー)はベイスギ(米杉)と言うヒノキ科クロベ属(若しくはネズコ属とも言う)の植物で、やはりスギ属ではありません。
他にもトップ材としてマホガニー、コア、メイプル、竹 他いろいろ使う場合もありますがあまり一般的ではありません。
ロースウッドかマホガニーか
次にサイド&バック材
サイドは側板、バックは裏板とも呼ばれ、共に音色に大きく関わってくる材です。
まず代表的な物はローズウッドと呼ばれるマメ科ツルサイカチ属の植物です。
ブラジリアンローズウッド
インディアンローズウッド
マダガスカルローズウッド
ホンジュラスローズウッド
ココボロ
など様々な種類があります。
特にブラジリアンローズウッドはハカランダとも呼ばれ、最もギターに向いているとされる材です。
しかし、1960年にブラジル政府が原木の輸出を規制し、その後ワシントン条約のレッドリスト1に登録されたことにより入手困難になり、価格も高騰しました。
イーストインディアンローズウッドはソノリケンとも呼ばれます。
これはインディアンローズウッドをインドネシアで植林し栽培したものです。
パリサンドル(若しくはパリサンダー)と呼ばれるローズウッドもありますが、これに関しては、ローズウッド全体を指したり、インディアンローズウッドのことを指したり、はたまたマダガスカルローズウッドのことだったりと取り扱う業種やメーカーでバラバラでした。
ヤマハはマダガスカルローズウッドのことをパリサンドル、インディアンローズウッドのことをインドローズ、イーストインディアンローズウッドのことをソノリケンと言って使い分けていました。(私もこの呼び方が正解だと思っています。)
次に多く使われるのはマホガニー。
サイド&バックにはローズウッドが定番ですが、マホガニーが好きという人も少なくありません。
見た目のよく似た代替材が使われることが非常に多い材で、真のマホガニーと呼べるのはセンダン科マホガニー属の
キューバンマホガニー
ホンジュラスマホガニー
の2種位で、しかも最高級とされるキューバンマホガニーは非常に稀少で入手が困難になっています。
また、ホンジュラスマホガニーもワシントン条約
などによりやはり入手が困難になっています。
現在主にマホガニーとしてギターに使われているのは、同じセンダン科でも
マホガニー属では無くセンダン科カヤ属のアフリカンマホガニーです。見た目ではほとんど見分けが付かず、名前にマホガニーと付いていて厳密に言えばマ
ホガニーでは無くカヤですが、カタログでもマホガニーと表記されています。
サペリもマホガニーの代替材
安価なので安いギターにもよく使われます。表記は「マホガニー」ではな
く、ちゃんと「サペリ」と表記される場合が多いようです。これは、マーチン、ギブソン、テイラー、ラリビーなど有名なメーカーが使ったことによると思われ
ます。センダン科エンタンドロフラマ属という種で見た目や音もマホガニーに似ていると言われていますが、ねじれや変形を起こしやすいという欠点がありま
す。
その他安いギターで昔から使われてきたナトーもマホガニーの代替材として有名です。
サイド&バックには他にメイプルを使う物もあります。
メイプルはカエデ科カエデ属の種で大きく分けてハードメイプルとソフトメイプルがあります。
ハードメイプルというのはメイプルシロップを作る為に樹液を採取するのに一番多く使われるサトウカエデ(シュガーメイプル)1種類しか無く、ギターに使われるその他のメイプルを全てソフトメイプルと呼びます。
ソフトメイプルにはシカモアカエデとも呼ばれるヨーロピアンメイプルやビッグリーフメイプルがあります。
シカモアカエデは古くから楽器に使われていて、ストラディバリウスなどのバイオリンにも使われいました。
シカモアカエデ(日本名:セイヨウカジカエデ)は、単にシカモアと呼ばれることも多いのですが、実際にはシカモアは別の植物です。
メイプルの特徴の一つに、材の表面に模様が出る事があります。
虎の模様のような虎杢(虎目模様)、
鳥の目のようなバーズアイ、
鱗のようなキルテッド、
炎のようなフレイム
など様々な模様が出てそれを生かした木取りや仕上げをします。
メイプル材の虎杢(Takamine PT-07E)
ボディ以外に使われる木
ネック材は堅く入手性が良いメイプルやマホガニー及びその代替材が多く使われます。
指板やブリッジは、高級ギターには非常に堅くて摩耗に強いエボニー(黒檀)比較的安価なギターにはローズウッドが使われます。
理想のギターは?
材質によって音の傾向はある程度ありますが、ギターの音は材だけではなくブレイシング(力木)も含めた設計やそれぞれの部位の材の組み合わせ、弦、ナットやサドル、作り方などで変わります。
特に私のような素人に大事なのは弾いていていかに気持ち良いかだと思います。
自分で弾いていて気持ち良く響いてくれるギターはモチベーションが上がります。
ある雑誌の記事でルシアーの方が、最近は良質な材を入手することが困難になっていて、高いけどあまり質の良くないホンジュラスマホガニーより非常に安価でも質の良いサペリやナトーの方が良いとさえ言っていました。
高い材 = 良い材ではないのは当然ですが
とは言え 昔から良いと言われてきた材にはやはりそれなりのポテンシャルがあると思っていますので、やはり材に対する憧れはあります。
もしも好きな材で作れるなら(もちろん質のよいものに限りますが)
形はドレッドノート
トップ材はアディロンダックスプルース単板
サイド&バックはホンジュラスマホガニー単板
ネックもホンジュラスマホガニーで 2ピースでも可
指板、ブリッジはエボニー
ブレイシングはノンスキャロップド
インレイはアバロン貝
ポジションマークはスノーフレーク模様
ボディバインディングはアバロン貝とメイプル
ネックバインディングはメイプル
ナットとサドルはとりあえず象牙
ペグはシャーラーのM6 Vintage G
こんなスペックで作ってみたいものですが、私が持っても宝の持ち腐れ感満載ですね。