歩き旅



息子A、B共に夏休みとなり、一日中家でゴロゴロ。
いい若いもんが、そんなことではイカンっ!!と、キャンプに行くことにした。

今まで何度もキャンプに連れて行っているのだが、移動は車。
歩きや自転車では行っていない。
子供達が小さかったこともあり、全く戦力にならないのでキャンプ用品は全部
トオチャンが担ぐことになる。
さすがにテントと三人分のシュラフとマット、更に着替えや食料を担ぐのは無理。
勢い、車での移動となっていたわけだが、テント担いでの旅ならば歩きが一番好きなので
いつかは行ってやろうと虎視眈々とチャンスを伺っていたわけだ。

息子Aも最近は背も伸びて、体力も年々下降気味の父ちゃんを追い越す勢い。
たっぷり担がせてもトオチャンより先にバテることも無さそう。
息子Bはとりあえず自分用の最低限の装備を持たせ、極力軽くしてやれば何とかなりそうだ。

さて、どこに行こうか。

先月の記事でも書いたように息子Bは一日20Kmくらいが限界。
キャンプでかつ、翌日も歩くとなると一日15Kmくらいに収めたい。
となると、自宅から30Kmくらいか。
自宅から30Kmくらいで、歩いて面白そうなところといえば、いつも自転車で日帰りしている
奈良井宿辺りが思い浮かぶ。
途中にキャンプ出来るところがないかと探していると、ちょうど自宅と奈良井宿の中間点
あたりの本山宿に「本山池の権現キャンプ場」というのがあった。
要予約だが高校生以上300円、小中学生100円と格安。

ここに決定。

早速電話で予約してイソイソと準備をはじめる。
キャンプといっても野宿の延長なので食べ物は質素にレトルトカレーに魚肉ソーセージが定番。
近くのスーパーでレトルトカレーを買ってきて、米を予備を含めて6合くらいザックに詰める。
後は朝食用のラーメン3つ。

トオチャンのザックは上記の食料に一人用テントやシュラフ、マット、バーナー、コッヘル、
カッパ、着替え等の一人旅セット。
息子Aは子供たち用の二人用テントとシュラフ、個人装備のマット、カッパに着替え。
息子Bが個人装備のマット、着替えに米3合たくための大きめのコッヘル。

後、ヘッドランプや細挽き、傘など小物なども忘れずにパッキングしてその日は就寝。

翌朝、トオチャンはいつもどおり早く起きたが、あんまり早く出てもお昼前に着いちゃうので
二人は比較的ゆっくり。
トオチャンは昼飯用のおにぎり作り。

10時になったのでそろそろ出発することにする。
朝方曇っていた空もいつの間にか晴れわたり、暑くなりそうだ。

息子Bは初めての歩き旅に不安なのか、ただ暑いのか浮かない顔。
大して息子Aは満面の笑顔。

奈良井川沿いの農道を歩いていく。

息子Aのザックの後ろに付いているのはお昼ごはんのおにぎり6つ。
トオチャンのザックも息子Aのザックも一杯で入らなかったのである。
ま、無理すれば入ったんだが潰れそうだったので外付けに。

日も高くなり暑くなってきた。

歩く道すがら、ところどころに看板が立っている。
このへんはウォーキングコースになっているらしい。
都会で、ウォーキングコースといえば綺麗に整備され、当然トイレや東屋があり、
若いオネーチャンたちがコジャレた格好で歩いているんだが、この辺のウォーキングコースは
何もない。
道もそこいらのあぜ道と大差ないし、小用は当然立ち◯ョン。

お昼も近くなってきた。
11時半と少し早いがちょうど神社があったので、ここで昼食にする。

ここ、太田諏訪神社はその名が示すように諏訪にある諏訪大社から分霊された
神社で、建御名方命が祀られている。
弘化四年(1847)、7年の月日をかけ村民の寄付金で建てられた。

木陰で涼しい境内は、太陽に炙られ歩いてきた身体に心地いい。

早速、太田諏訪神社ご神木、周囲350cmの欅の木の前でお弁当を広げる。
たっぷり汗をかいた身体にキツ目の塩を利かせたおむすびが美味しい。

お腹もふくれ、身体もクールダウン。
リフレッシュしたところで先へ進む、が、息子Bが鼻血。

えーとティッシュはどこにしまったかなー、と、ザックを下ろそうとしていると、自分のバッグから
さっさとポケットティッシュを出し、くるくる丸めて鼻に詰める息子B。

て、手馴れてる。

最近何かというとすぐ鼻血を出す息子B。
それもいつもボタボタたれるくらいの勢い。
一度太めの血管を傷つけてしまい、それが完治しないうちにカサブタをとってしまうのが
いけないみたいだが、ひどい時など毎日のように流血騒ぎを起こしている。
うちのゴミ箱はいつも殺人現場のようである。

そうこうしているうちに道は洗馬宿を過ぎ一旦国道19号線に出る。
国道に出るとすぐにセブンイレブンがあるので、ここで今夜の食材(ビールとおつまみ)を
仕入れていくのである。
とは言っても時間はまだ午後1時半。
夜まではまだまだ長い。
せっかく買ったビールが温まってしまう。

それはまずい。

ということで、氷も一緒に買ってしまった。

ビールにロックアイスに子供達用のアクエリアス2リットル。
これだけで優に4Kg近く。せっかくの軽量装備がァ。

ちなみに、とてもじゃないが中に入らないので外付け。

その他のパンとかおつまみは息子A担当である。

買い物を済ませたらキャンプ場へ急ぐ。

国道19号線から離れ、国道と並行して走る中央西線の線路を渡る。

本山宿の街並みを左手に見ながら1.5車線の細い(歩くだけなら十分広い)道を進むと
キャンプ場の看板が見えてくる。

奈良井川に向かい下って行くと目的地の「本山池の権現キャンプ場」はある。

周りにはゲートボール場などもある林間のキャンプ場。
すぐとなりを奈良井川が流れ、木陰のサイトは夏でも涼しい。
トイレと流しは完備していて、車はサイトに入れない。
オートキャンプ場は大っきらい(キャンプ場自体あまり好きじゃないけど)なのでよい。

キャンプ場に着いたが管理人さんはいない。
そう、要予約というのは予約しておかないと管理人さんがいないのだ。
で、流しの水道とトイレとサイトの明かりが使えない。
と、言うことは、水も明かりもトイレも使わなければ、こっそり一泊することも出来る。

でも、格安料金だし、キャンプ場は綺麗に掃除してあって、とても過ごしやすいので
管理費としてぜひお金を払って利用したい。

電話で伝えた到着時間の3時頃、管理人さんが登場。
利用代を払ったり名簿に名前書いたりしながら世間話をしていると、この方
なんと息子Aの同級生のおじいちゃんらしい。
いや、世の中狭い。

焼肉やるなら網もあるし、テントの下に引く板もあるから好きに使っていいよー、と
言い残し、管理人さんは去っていった。
結局この日のキャンプ場の利用者は自分たちだけ。

いやー、こんな風に独り占めできるならキャンプ場もいいなー。

斜面にそってサイトが点在しているが、奈良井川沿いの一番低いサイトに決め
テントを張る。

息子Aが立てているのはトオチャンが初めて買ったテントで石井スポーツのゴアライト2。
第一世代GORE-TEXを使いフライシートをなくしたシングルウォールテント。
買った当時は超軽量テントだったのだが、最近の標準と比べると並。
当時一人で使う予定しかなかったのに2人用にしたのは、シングルウォールテントでフライを
使わないので、前室がなく就寝時全部(靴とかゴミとか)テント内に入れなければならないので
少し大きめにしたから。
なんだかんだ言いながら子供が出来るまではこれ一つで、歩きやオートバイ、車の野宿旅で
活躍していた。
最近すっかりお役御免となっていたのだが、子供達用テントとして復活。

自宅で何度も練習した息子Aはスムースにテントを立てている。
と、よく見ていると狭いテン場で貼る時用の「ポールを全部伸ばさないでスリーブに通す」方式だ。
そりゃ確かに狭い6畳の寝室で立てるにはポールを全部伸ばせないので、この方法で教えたけど
こんなに広いところに自分たちだけなんだから、普通にポール全部伸ばしてからスリーブに
通していいんだぞ−。

子供たちのテントも無事に立ったみたいなので、トオチャンのソロ用ダブルウォールテントを
立てて、中にマットとシュラフを広げれば今夜の寝床完成。

サイトの地面は小石もほとんど落ちていず、ペグも手だけで刺さってしまいそうなほど
具合が良い。
やはりこういうところはキャンプ場さまさまである。

モスキートネットを閉め、虫が入らないようにしたら夕食まで自由時間。

子供たちは仲良く走り回っている。

キャンプ場に流しがあり、水はたっぷり使えるので普段研がない米を研いで
そのまま水につけておく。

息子Aが足を滑らせ岩に指をぶつけ負傷するなど、ちっとも親を飽きさせない
いい子達と遊んでいるうちに日が傾いてきた。
ガスストーブに火をつけ、米の入ったコッヘルを乗せる。
中火で沸騰させ、一度蓋をとってスプーンでかき混ぜる。
もう一度蓋をして、レトルトカレーを重し代わりに上に乗せたら弱火で水分がなくなるまで。

米の炊ける音を聞きながらビールをグビッ。

ご飯の焦げる匂いがしてきたら、火を止める。

すっかり暗くなった。

頭にヘッドランプをつけて、その明かりで夕食。
レトルトでも外で食べる飯はうまい。

食事の後片付けも終わり、テントに入る。
蝉の声はいつの間にか鈴虫の音に代わっている。
隣のテントからは子供たちのおしゃべりがいつまでも聞こえていた。


翌朝、4時半起床。

トイレに行くと、コウモリのような大きな蛾が乱舞している。
とりあえず小用を済ませテントに戻り、テントの前室で湯を沸かしコーヒーを淹れる。
コーヒーを飲みながら明るくなっていく空を眺める。
一日の中で一番好きな時間かも。

そういえばこのキャンプ場、民家が近いせいか携帯やAMの電波はおろか、FM、ワンセグの電波まで
ガンガン入ってくる。
携帯のワンセグでニュースや天気予報をチェックしていると子供たちが起きてきた。

ラーメンで朝食。

ガスストーブは2個持ってきたので子供たちの分は息子Aに作らせる。
ちゃんと食えるものができたかぁ?

飯食ったので、「◯んこ」しにトイレへ。

さっきの大きな蛾はいないけど、天井からなんかぶら下がっている。
よく見るとコウモリが3匹。

さっき「コウモリみたいな蛾」だと思ったのは「ホントのコウモリ」だったのねぇ。

7時、撤収開始。

テントをひっくり返してバサバサ振って中のゴミを落としそのまま逆さまにしてボトムを乾かす。
その間にシートの上で寝袋やマットをしまい、コッヘルやストーブをパッキング。
テントをくるくるたたんでスタッフバックにねじ込んだらザックに詰める。

7時45分撤収完了。
ん〜、時間かかりすぎ。
歩き旅なのでザック背負ったら、そのまま歩き出すと今日の旅開始。
車に乗り込むとか、エンジンを掛けるとか、中居さんに見送られるとかの儀式はない。

中山道には戻らず、来た道そのまま先に進み、林道奈良井川線に入る。

この林道は本洗馬と本山をつなぐ林道で、奈良井川右岸の山沿いを走っている。
そのまま行くと洗馬の方に戻ってしまう。

しばらく進むと分かれ道があり林道日出塩線に入る。

狭い林道で通る車もないらしく轍に草が生えている。

車だと難儀しそうな林道を進んでいくとがけ崩れ現場。

おぉ、さすがにここは車じゃ無理。オートバイでもキツイか。

でも、歩きなんで平気。

山側を気にしつつサクッと乗り越える。

3Kmほど歩くと国道19号線、「是より南木曽路」の碑がある所に出る。
平野の風景は、山に囲まれた狭い谷間の景色に変わる。
ここから馬込までの十一宿が木曽路。

この碑のちょうど反対側、国道を渡ったところに旧中仙道への入り口がある。

かっ飛んでくるトラックに気をつけながら道を渡り、旧中仙道へ。

崖崩れ防止のため、コンクリートで固められた風情のない道を登っていく。
このままつづら折れを登り高度を上げた後、山沿いを奈良井川にそって進む。

このあたりは岩場の急峻な崖で、下に道が通せず大きく迂回するように崖の上を中山道が
通っている。
今、国道19号線が通っている道は桜沢の人たちが自力で崖を削り、切り開いたものらしい。

古の風情を残す山道はすぐに終わり、桜沢の集落に出る。
数戸の家が崖に張り付くように建っている。
国道は大型トラックがひっきりなしに轟音を立て流れていく。

しばらく行くと左右の山の間隔がやや広がり見通しが良くなる。

若神子の一里塚を過ぎ「中部・北陸自然歩道」の標識にそってY字路を右へと進むと
静かで風情のある三つの集落を通り贄川駅前に出る。

贄川駅を過ぎ、線路を陸橋で越えると贄川の宿場町に入る。
宿場街の道をしばらく行き「ひのきや漆器店」の奥の路地を入るのが本来の中山道。

民家の裏を通り、本来の中山道はSS食道のあたりに繋がっていたらしいが、今は
中央西線の線路で分断されている。

陸橋を渡り国道19号線にまた戻る。
八田漆器店の脇を通り草だらけの歩道を進むと「押込の一里塚跡」がある。

また国道に戻り、しばらく行くと左に入る道があり、長瀬の集落に入る。

この辺の道は集落を避け、バイパスのように国道19号線が通っていて、各集落は
昔の街並の風情を残している。
国道から集落に入りしばらく行くと国道に戻る。そしてまた集落、というパターンを繰り返す。

長瀬の集落を後に先へ進むとセブンイレブンがある。

時間は11時40分。

そろそろお昼の時間だが、蕎麦好きの息子Bに奈良井の蕎麦を食わせてやろうと
ここではアイスでエネルギー補給&脳みそ冷却。

体が暑い時アイス食べると、頭の芯から冷えるようで気持ちがいいよねー。

セブンイレブンと道の駅「ならかわ」の交差点を右に入る。
旧楢川村役場、現塩尻市楢川支所の脇の道を登って行くと諏訪神社がある。
中山道はこの神社の境内を通っていた。

更に進むと重要伝統的建造物保存地区に指定された平沢の集落が見えてくる。
ここ平沢は奈良井宿の隣に位置し、奈良井の一部としての性格も持っていたらしい。
漆器店が多数建ち並び良い風情だが、奈良井と比べ人通りは少ない。

奈良井川沿いの道を進むといよいよ目的地の奈良井宿。

とぉ〜ちゃーく!!(水曜どうでしょう、藤村D風に)

現在時間12時42分。

帰りの電車の時間は13時25分の後はなんと15時59分。ほぼ16時。
出来れば13時25分に乗りたいなぁ。
でも、頑張った息子Bには蕎麦食わせてやりたなぁ。
迷った末、蕎麦決定。

以前寄った越後屋を目指し走るっ!!

重いザックを引きずるように座敷に上がり蕎麦注文。

で、注文した後財布を見たら、千円札が三枚。
あれ、蕎麦が一人前千円だったから帰りの電車代が・・・。

小銭を確認すると700円。ちょっと足りない?

蕎麦食い終わったら、逃げる?

などと相談していると蕎麦到着。
とりあえず食う。

うまい。(涙!!)

疲れた身体に甘じょっぱいタレが染みこむようだ。
蕎麦を食べて脳みそが活性化したのか、脳裏にひらめく過去の記憶。
そういえば何かの時にと財布のカード入れに1万円札を入れていたような。
早速確認するとちゃんと入っている。

おぉ〜、助かった。
蕎麦、エライ。 ←ちがう

店員の警戒するような視線の中、無事支払いを終え駅に急ぐと13時15分。

間に合った。

平日で蕎麦屋が混んでいずすぐに出てきたのが良かったか。
何はともあれ無事3人分千円で切符を買いホームへ。

あの一万円がなかったら300円足りなかったのね。
と、言うことはセブンイレブンでアイス食わなかったら、虎の子の一万円使わずに済んだのか。


それから数日が経ったお盆の13日。

かねてから計画していた「歩いて実家まで」計画を実行した。
通る道は毎年自転車で帰省している稲倉峠、保福寺峠経由。
ただし、自宅からだと40Kmを超えるし、松本市内はいつも通っていて面白みがないので
稲倉峠麓にあるセブンイレブンまでカアチャンの車で送ってもらい、カアチャンと息子Bは
そのまま実家まで。
そこからの30Kmを息子Aと一緒に歩くというもの。

朝、3時半に一人布団から抜け出し家族の朝食の用意。
自分に関係ないのに朝早く叩き起こされるカアチャンのゴキゲンは取らないといけない。
しっかり朝食を食べたら4時半出発。
5時セブンイレブン着。

と、ここで大変なことが発覚。
出かける前充電していたスマホ、忘れた。
最近カメラを持つと重いので、写真はスマホでとっているので、写真が撮れない。
とりあえず、要所要所で息子Aのケータイ借りて撮ってはいるが、やはり借りて取るというのは
具合が悪く、あまり撮れていない、ので、ササッと行ってみる。

稲倉峠入り口。

稲倉峠。

団子、食う。

そして1,345m保福寺峠。

疲れた、けど、なんとか無事到着。
来年は息子Bも連れて行こう。



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2012.8.27 *** Hiroshi Yae -- E-Mail: h_yae@sa2.so-net.ne.jp -- Twitter: @h_yae ***