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幽霊(ゆうれい)とは、

死んだ者が成仏できず姿をあらわしたもの

死者の霊が現れたもの

(出展:Wikipedia


夏らしく暑くなってきました。まさにピッタリのテーマ・・・?

一口に幽霊と言っても、テーマが多岐に渡りすぎていて絞りにくいなぁ、

と言うのが正直なところではあります。



夏らしく怪談のセンも考えたんですけど、焦らすだけ焦らして『わあっ』と

脅かすのも何かちょっと違う気がします。どちらかと言えば、真冬の寒い最中に

背筋がゾッとするようなのが本来の怪談なのかな、と。



あ、でも。そもそも幽霊って怖いものなんですか?

幽霊とは成仏できない人間の魂、みたいな解釈も結構あって、

心残りが解決すると安心して消えていくなんてお話もよく聞きますよね。

ホンワカ? しんみり?

個人的にはこんなのが好きです。




そうそう。ちゃんと宣言しておかないといけませんね。

ワタシはロジカルな人間のつもりなので、『ホントに』幽霊がいるとは思っていません。

いるとすれば、それは人の心の中だけ。

実際、ホントにいようがいまいが、その人が『見た』と信じて納得してるなら

それはそれでOKなんですよ。

それをやたらと吹聴されても困りますが(笑)

信じるのは人の自由。これはちゃんと認めています。



さて。前置きはこの辺にして。以下は『とあるバーで』『人から聞いた話』です。

ホントかどうかも判りませんが、本人が納得してるんで、ワタシもそれで納得しました。

そのお話を簡単にまとめました。



では。どうぞ。




Sさんは当時35歳。今日現在、未だ独身貴族を謳歌中。

ご両親が健在で同じ家屋に住んでいる。

そのSさんは数年前に祖父を亡くされた。(祖母は既に他界していた)

いわゆるおじいちゃんっ子だったため、その時は結構大変だったらしい。



おじいちゃんが亡くなって1年ほどたった頃、8月にお墓参りに行ったとき、

ほんの一瞬だったが、妙な感覚に襲われたそうだ。

『おじいちゃんの部屋にしまってある古い本を**さんに届けなければならない』

どこぞの超能力者じゃないが、『分かってしまったのだから仕方が無い』とは彼の弁。

翌週、彼はおじいちゃんの部屋で、果たしてその本を見つけることができた。

古い本で、何語で書いてあるのかも判らない。

(後日、それはラテン語だったらしいと連絡してきた)

届け先である**さんは、調べてみると少々遠いところに住んでいるらしい。

『車で行くにしても2,3日休まないといけないな』

ところで、彼も勤務している会社ではそれなりの地位にいて、そんな休暇が

突然まかり通る訳も無く、1週間、2週間と時間が過ぎていく。



やがて1ヶ月が過ぎた頃、またしても妙な感覚に襲われ始めた。

今度は一瞬ではなく、自分の部屋の中で常に誰かに見られているような・・・

その視線(?)とも妙な感覚とも言えるものは、不思議と怖さを感じさせず、

むしろ懐かしい暖かさがあったそうだ。

そして、時間の経過とともに、それが、おじいちゃんの優しい目が

語りかける視線のように思えてきた。

そう思い返してみると、おじいちゃんが亡くなった翌日から、

同じような視線とも雰囲気とも言えるそれはずっとあったように思える。



この時点で、それって思い込みじゃないの?と突っ込んだのだが、

あながちそうでもないらしい。



さらに2ヶ月が過ぎて、冬の足音が近づいてきた頃、ようやく彼は休暇を取ることができた。

先方にも連絡が付き、11月も末になろうかと言うその日、彼は週末を挟んで

**さんを訪問する予定で自宅を車で出発した。

その**さんが住んでいるところは、Sさんの自宅から800キロほど離れている。

コンスタントに移動出来ればざっと10時間だが、もともとこのために

休暇を取ってきたので、のんびりドライブを楽しみつつ、目的地に向かったそうだ。



ところで。例の『奇妙な感覚』はこのドライブ中も付いて回っていた。

好きなロックを掛けっぱなしにしていても、優しい視線が絶えることはなかった。

普通なら気味が悪くなるところだが、彼はむしろ安心感が大きかったと言っている。




・・・この時点でツッコミどころ満載なんだけど。どうしましょうかね?

気持ち悪いくらいに雛見沢症候群じゃね? みたいな。しかもL5

足音は聞こえなかったらしいけど。

とりあえず続けましょうか。






長い長いドライブの末にようやく目的地に到着。時刻は夕方5時。

**さんは齢77歳のおじいさんで、彼のおじいちゃんの戦友だったらしい。

事情を聞くと、若い頃にその本を彼のおじいちゃんに貸したまま、

時間が過ぎ去ってしまったとか。

そんなご大層な本なの、これ?

そう思いつつもお告げ(?)に従って、彼はそれを手渡す。









その本は、正当な持ち主のもとに帰ってきた。











『ありがとう』











夕暮れが迫る街外れのその家が、一瞬ぼうっと明るくなったかと思うと、

それまで彼が感じていた例の感覚がすうっと消えた。



『えっ?』





慌てて周りを見回したけど、何事もなかったかのような静寂。



『疲れただろう。今夜は泊まって行きなさい』

おじいさんの声にハッとして振り返る。

その目は、彼のおじいちゃんと同じように優しく語りかけていた。





翌日、彼は自宅に向かい、翌々日帰宅した。



おじいちゃんの部屋に入ってみたけど、もう何も感じない。





彼はこのあとかなり悩んだらしい。

最終的に自分の中で消化したストーリは、その大切な本をいつか返そうと

思っていたおじいちゃんが、それを心残りとして自分に代行させた。。。というもの。

なんだそうだ。




話はこれでおしまい。だけど。聞いてる途中でツッコミたくて仕方がない点が。

『えーと。聞いていいか?』

『ああ。どうぞ?』

『なんで車で行ったの? 新幹線とか飛行機とかもっと速いのがあるんじゃ?』

『うーん・・・言われてみればなんでだろう。でもその時は車で行く以外の選択肢は考えなかったな。』

『そうか。じゃ、もうひとつ。その戦友の爺さんだけど、いまでも生きてるの?

と言うか、その本を返してもらって何のコメントもなかったのかい?

どうも話そのものがしっくり来ないんだけど』

『・・・そうだね。この話だけじゃ多分君は納得しないよな。

実は全部話した訳じゃない。意図的に話さなかったところがある。

でも、それは口にしたくない。

その戦友のおじいさんは今日も元気だよ。

本を渡したときは、にっこり笑ってお帰りって一言だけ』

『何と言うか、チカラいっぱい消化不良なんだけど』

『悪かったね。ヘンな話に付きあわせて。1パイント奢るからそれで忘れてくれ』




つまるところ。彼は自分で納得できるストーリを思い付き、それで納得した。

おかげでワタシは消化不良のアタマを抱えつつ、アルトビールを呷って自分を納得させた。

ただそれだけの話。



どうも、込み入った事情があるようです。自分の中でいろいろと妄想は膨らむのですが、

一応自分の中だけに留めておきます。

彼がこのあとの人生でおじいちゃんの優しい視線を再び感じることはないでしょうけど、

いまを楽しんでいるようなので、ま、いっか。


今月の脚注: 隠すまでもなく舞台は日本じゃありません。またその彼(?)というのも簡単に特定ができないようにいろいろと設定を変えています。ちなみにその人とは、とあるSNSで友人関係が続いています。いつか隠された物語を聞かせてくれる日が来るかも知れませんね。