独断的自転車論1




世の中、空前の自転車ブームだ。

不景気と、ガソリン代値上げ、健康ブーム、Ecoブーム。

そういえば10年ほど前にも一度ブームになったことがあった。

いわゆる「失われた10年」真っ只中である。

やはり不景気が世の中に蔓延すると自転車がブームになるらしい。


10年前の自転車ブームの時にはMTBがもてはやされ、街中に
その場所にはふさわしくないファットタイヤを履いた自転車が溢れかえったものだ。

さらにはダウンヒルレースの活況にあわせ、長大なサスペンションと10メートルの
ドロップにも耐えられる強靭なフレームを持つ重量級バイクが街中を悠々と闊歩していた。

そして今はロードバイクが巷に溢れている。


でも、こうした流行り廃りに関係なく、自分の好きな自転車を楽しんでいる人達もいる。

もともと自転車は使う場所、目的、使う人の嗜好により千差万別の車種があるもので
また、それを叶えられる乗り物でもある。

そこで、私の独断でこんな自転車が良いという偏見いっぱいの意見を書いてみようかと思う。

あくまでも私の個人的意見なので、こんな意見俺は認めない、という人がいてもぜんぜんOKだ。


フレーム

とりあえずはフレームから。

個人的には自転車の性能を決めるのはタイヤとホイールだと思うが、交換するのに
一番手間がかかり、一番大きく、自転車の個性を決めるパーツでもあるので、やはり
フレームを一番に持ってくることにする。

昔はY字フレームとかT字フレームなどもあったが、今では自転車競技のルール変更などもあり
コンベンショナルなダイアモンドフレームが主流となっている。


TREK Y3

フレームを構成するパイプは前三角と後三角に分かれ、前三角を構成するのが
ヘッドチューブ、トップチューブ、ダウンチューブ、シートチューブの4本。

後三角がシートステイ2本とチェーンステイ2本の4本。

この計8本のパイプの長さの組み合わせにより自転車のジオメトリが決まる。

形状はトップチューブが水平にセットされるホリゾンタルフレームと、前上がりにセットする
コンパクトフレームに分かれる。

昔はロードはホリゾンタル、足つき性とフレーム強度を求められるMTBはコンパクトフレームと
決まっていた。

前上がりのトップチューブは有効トップチューブ長に対し実トップチューブ長が長くなるため
トップ部分の剛性が下がり踏んだ時に伸びない、とロードバイクでは嫌われていた。

しかし、肉厚大径フレームで剛性をあげられるアルミフレームの台頭と共にロードバイクにも
コンパクトフレームが使われるようになり、最近ではホリゾンタルフレームのロードを探すほうが難しい。

ロードレーサーにおけるコンパクトフレームの目的はMTBの足つき性のためと違い、ヘッドチューブ長を
伸ばしハンドル高さを稼いで乗車ポジションをアップライト(前傾が緩い)にするためだ。

ホリゾンタルとコンパクトどちらが良いかだが、性能に大差はない。好みで選べばよろしい。


次に材質。

細かく分けると大変なので大きく分けて、クロモリ、アルミ、カーボン。

チタンは優れたフレーム材だが、選択肢が著しく少ないので省く。


クロモリ。クロームモリブデン鋼の略である。

鉄は語りだすと大変なのだがクロームの含有率が増えると錆びにくくなり、モリブデンの含有率が増えると
一般的に靭性が上がる。

自転車用フレーム材としてはニッケルクロームモリブデン鋼、ニッケルクロームバナジューム鋼なども
つかわれ、中でもコロンバス社のニバクロームは有名だ。

元々がスチール、バネ材なので反発力が強く、ふみ心地が良い。

ただ、やはり重いことと、錆びやすいのがネック。

実用性の観点からは?が着く。

だが、細いニバクロームのチューブを使ったクラシックロードの佇まいには独特の美がある。

ちょっとした街乗り、コレクションには最適だと思う。


アルミを飛ばしてカーボン。

カーボン、カーボンと言っているが正式にはカーボンコンポジット材。

カーボン繊維をエポキシ樹脂などで固めた材料で早い話が高強度のプラスチック。

でもエポキシ剤の耐候性はFRPボートでの実績もあるので信頼していいと思う。

補強のカーボンはピンきりで、剛性の高い航空宇宙用ハイモジュラスカーボンは超高価。

でも耐衝撃性、耐久性の高いカーボン繊維は比較的安価。

高ければいいってもんでもなく適材適所。設計が大切。

その設計がパイプの強度も含め自由にできるのがカーボンのいいところだと思う。

でもやはりプラスチック。落車などで大きな衝撃を受けると割れることもあるし、摩耗にも弱い。

何かで深い傷が入り、その傷が繊維まで達すると一部分のみが極端に強度が落ち危険である。

パフォーマンスのみを追求するのならばカーボン以外考えられないが、街乗り、ツーリング、トレーニング
などの一般的な用途には扱いがセンシティブ過ぎる。

道具はガンガン使えるものが良い。


アルミも語りだすと枚挙にいとまがないが自転車に使われるのは6000系、及び7000系アルミで
それ以外はママチャリ用(スカンジウムを混ぜたもの等もあるが6000系、7000系と同等と考えて問題ない)。

7000系アルミは溶接しても強度が落ちないのでフレーム材として適しているが、うまく設計しないと
固すぎて膝にくる。

そう、材質より設計が大切。

うまく剛性バランスを考えて作られたフレームならアルミでも疲れない。

衝撃吸収はフレームだけでするものではないのだ。

フレームはあくまでもしっかりとした剛性バランスを持ち、人間の発揮するパワーを無駄なく
伝えられればそれで良い。

衝撃吸収はタイヤ+ホイール、フォーク+ハンドル、シートポスト+サドルなど、トータルでするものだ。

扱いの簡便性、価格、パフォーマンス、重量など総合的に見て現在のベストフレーム材はアルミ。

適切に設計されたアルミフレームに、注意深く選択されたカーボンフォークをつければ、衝撃吸収に
ついてはそれほど気にすることはない。


ワイアリング。

ロードバイクの場合、シフトワイアのワイアリングは選択の余地は内蔵するか否かぐらいだが
リアブレーキのワイアリングにはざまざまある。

まず内蔵。

やはりすっきり見せるには内蔵が一番。

でもメンテナンスがしにくいので、出来れば外装式のほうが良い。

で、どこを通すか。

ツーリング中どうしても越えられない場所を担いで越えることを考えると
ワイアはトップチューブの上部を通っていたほうが良い。

昔、とあるMTBにあったようなサイドにあるものは問題外である。

でもロードなら、トップチューブの下を通すものが一般的だと思う。


フォーク。

前輪とフレームを繋ぐ部品。

昔はスチールだったが今のロードバイクはほとんどがカーボン。

重さ、衝撃吸収性など考えるとカーボンでいいと思う。

ただ、ステアリングコラムは最低でもアルミのものが良い。出来ればスチールが良い。


後、フレームにはリアエンド小物だとか、ヘッドパーツだとか、BBシェル幅だとか、
キャスター、シートアングル、BB下がりなどのジオメトリなど、いろいろうんちくもあるが
使用目的によっても変わるのでここでは端折る。


タイヤ&ホイール

ある意味自転車の性能を決定づけるパーツ。

極論、フレームは前輪と後輪と人の位置決めのためのパーツとも言える。

自転車を買うときまず最初に決めるのはどのタイヤを使うかだったりしてCareraを
買ったときにはフレーム以前にミシュランのクリンチャータイヤが決まっていたし、TREKの
MTB買ったときにはIRCのマーベラが先に決まっていた。

今乗っているFELT Breedは・・・、微妙である。シングルスピードありきだったような気がする。

スポーツバイクの場合、大きく分けると26HE(フックドエッジ)と700C(27インチ)になる。

26HEはMTB等に使われている規格でリムの規格はHE-1。リムの外形が575mm。

タイヤのサイズ表記はインチ表示で、一般的に使われるサイズは街乗り用スリックも含めて
26x1.5〜26x2.5くらい。

対してロードバイクによく使われるのが700Cと呼ばれるものでリム形式はWO-4。外径622mm。

タイヤのサイズ表記は700x25Cのようにmm表示。

ただし同じ26インチでも26HEと26WOではリム外形からして違うので同じ26インチだからといって
適当にタイヤを買うとハマらないので注意が必要である。

ロードバイクなら700Cで特に問題はないと思うが、タイヤ選びでもっとも重要なのがエアボリューム。

タイヤの中にどのくらいの容量の空気が入っているかの数字で、乗り心地と空気圧の保持能力に影響する。

競技用700x23Cで460ml、私の乗っているFELT Breedに付けている700x35Cで1360ml。

これだけエアボリュームが違うとカーボンフレームの恩恵なんて無いに等しい。乗り心地がぜんぜん違う。

スピードも違うけど。

タイヤ幅は太くになると、横方向の安定性が増え、不安定な路面でのグリップ性能が上がるのに加え
タイヤ外系も大きくなるので乗り越え性能も上がる。

23C、25Cといったタイヤが常に路面に注意しながら走らなければいけないのに、28Cを超えたあたりから
路面の状態を気にせずにすむようになる。

35Cになれば林道走行も十分実用的にこなせる。

さらに、太いタイヤは無理な軽量化をしていないものが多く、対パンク性能が高いのもプラス要因である。

常にサポートカーがスペアホイールを持ってきてくれるロードレースと違い、ツーリング中のパンクは
旅の予定を大幅に狂わせる厄介なトラブル。

乗る予定の電車に乗れなくなったり、日暮れまでに帰宅できなくなったりと、いいことはない。

なるべくパンクの可能性を減らすセッティングにすべきだ。

最新カーボンロードに21Cのチューブラータイヤを履かせた自転車のシルクのようなふみ心地も、
魅力的であるが、スピードを追求するのでない限り細いタイヤに固執すべきではない。


チューブも、ロードレース用のウルトラライトチューブからダウンヒル用のタフチューブまで様々ある。

ホイール周りの軽量化は踏み心地に大きな影響をお与え、軽いチューブを使うだけで一段重い
ギアを使えたりするが、薄いチューブはパンクの可能性が飛躍的にアップするのでバランスが大切。

チューブのバルブはママチャリ用のウッズバルブは内部エアのリリース機能がないので空気圧が測れず、
高圧に耐えられないのでフレンチバルブが良い。

バルブキャップはフレンチバルブの場合必ずしも必要ではないが、スペアチューブを持ち歩く場合は
バルブがチューブを傷つけるのを防ぐために付けておくほうが良い。

チューブ素材はプチルゴムとラテックスがある。

ラテックスは天然ゴムで対パンク性が高く転がり抵抗も少ないが、空気の密閉性が悪いので
こまめな空気圧管理が必要になる。

一般的なのはプチルゴム。価格も安く、空気の密閉性が高いのでメンテナンスは楽である。
耐久性も高い。


最近増えてきたチューブレスタイヤは転がり抵抗が少なく、パンク時の空気圧低下が緩やかなのがよい。

ただ、パンク修理しにくいのが欠点。

ピックでのりの付いたパッチをねじ込むタイプはパンク穴の位置がすぐに分からなくなるし、裏から
パッチを貼る方式は、チューブレスタイヤのタイヤ交換をしたことがあればわかると思うが
ツーリング中にやる様なものではない。

今のところレース用と割り切ったほうが無難。


ホイールは最近完組みのものが増えてきたのでそれで問題ないと思うが、特殊な用途になると
やはり手組みすることになる。

ハブはフロント100mm、リア110mm、120mm、126mm、130mm、135mmの幅のものがあり
最近のバイクではトラック120mm、ロード130mm、MTB135mmと覚えておけばよい。

その他にもスモールフランジ、ラージフランジとかMTBのディスクブレーキ対応とかフリー、フィックスとか
カセットスプロケット対応等々、様々の種類があるので必要に応じ使い分ける。


スポークは太さの変わらないストーレートタイプと、一回太さの変わるシングルバテッド、中央部のみ
細いダブルバテッドとある。

さらに最近は空気抵抗を減らす目的で扁平加工されたものもあるが、走行場所、使用目的で
太さや本数を決める。

当然太いスポークを使うと丈夫だが硬くなり、細いスポークを少数使うとしなやかだが、曲がり
やすいホイールになる。

スポークの組み方はラジアル組、イタリアン組、JIS組があり、前輪ラジアル組、後輪イタリアン組が好み。

ちなみに今のっているFELT Breedのリアエンド幅は135mm。シングルスピードマウンテンバイク用で
ディスクブレーキ非対応のハブが必要になる。


え〜、長くなったので小物に関しては次回ッ!!。



2010.12.21 *** Hiroshi Yae -- E-Mail: h_yae@sa2.so-net.ne.jp -- Twitter: @h_yae ***