iPad




そう、iPad買っちゃったんである。

かくいうこの私、実は昔Macユーザで、DOSやWindows3.1を横目にMacでブイブイいわせていた。

それがいつの間にかWindowsなんかを使っているわけなんだが、今年1月にiPadが発表になった時
ふと昔の記憶がよみがえった。

そう、アラン・ケイが提唱したダイナブック構想。

いつの間にか東芝からDynaBookというノートPCが出たため、あまりありがたくない名前になって
しまった感(東芝さんごめんなさい。DynaBookは良いノートPCだと思います)があるが、当時
理想のコンピュータ像として燦然と君臨していたのである。

さらに、アラン・ケイのダイナブックの影響からMacintoshが生まれ、ビル・アトキンソンのマジック・スレート
が構想されるわけだが、ダイナブックにしろマジック・スレートにしろA4判程度の板状の形状をして
子供でも理解できるグラフィカルユーザーインターフェースと、ネットワーク、音声認識、子供にも
与えられる価格という特徴を持っていた。

iPadの価格が子供に与えてもよい設定かどうかは、その子供の親の稼ぎ次第だが、そのほかの
形状、機能は在りし日のダイナブック、マジック・スレートを彷彿とさせる。

発表を見たとき「おぉーっ!!」と雄たけびを上げたのは私だけではない(注)と信じたい。

テッド・ネルソンが発想したザナドゥ計画がWorldWideWebという形で(その一部が)実現したことと
併せて、当時理想のコンピュータ像に胸をときめかせ目をキラキラさせていたコンピュータ少年たちの
理想が今、目の前に実現したのである。

これは買うしかない。

と思っても、今年はスマートフォンも買いたいし、最近仕事ないし、iPadはFlash使えないし、
A4チップはメモリ256MB(!?)しか積んでないし。と、自分の中でネガティブキャンペーンを
はってみたりする。

でも結局は物欲に負けてポチッとしてしまうんである。



さて、紆余曲折の末、我が家に届いたiPad。

まず箱から取り出してみると、ツルンとした外装とやや重めの重量で、はっきり言って落としそう。

同時に購入したApple純正ケースに早速入れる。

ジョブスが作った製品らしく、ハードウェアボタンが少なく外部インターフェースも最小のマシンは
ケース入れっぱなしでもちっとも困らない。いいんだか、悪いんだか

大きさはちょうど6号のキャンパスノートと一緒。

ちょっと横幅あるかな。

アップルマークが懐かしい。


SafariでWingWebを開いたみたところ。

下はVAIO TypeG。

ともにXGA、1024x768表示で表示エリアもほぼ一緒。

横幅は最近はやりのワイド液晶より狭いが、やはり縦に長いと使いやすい。


ところで私がiPadを買ったのは単にダイナブックに対するノスタルジーだけではない。

ちゃんとした使用目的もあるんである。

仕事柄大抵PCの前にいるので、メールチェックにしろ、調べものにしろ困らないんだが
いったん仕事をかたして、茶の間で家族と団らんしている時、メールチェックしたくなったり
何か調べたくなると、ここでノートPCの出番。

でも、Windowsノートの場合、使えるようになるまで結構な時間がかかる。

スリープしておけばいいような気がするがそうではない。

画面は割合とすぐついて起動したようなふりをしているが、ハードディスクのアクセスランプが
点きっぱなしだったり、タスクマネージャー開いてみるとCPUの使用率100%だったり、ハッキリ言って
「つかえねー」状態なのである。

ちゃんと使える状態になったころには、シナプスが減少の一途をたどる脳みそはすでに本来の目的を
忘れ去っている。

ただ感覚的なことを言っていても科学的ではないので一応タイムを計ってみた。


対決するのはiPad WiFi 64GBモデルとVAIO TypeG 1GBメモリのリカバリーしたばかりのまっさらのマシン。

お寝んねしている状態から復帰させてWebブラウザーを立ち上げ、お気に入りに入れてあるWingWebを
キックして表示されるまでの時間を測る。

まずは休止状態のVAIO TypeG。

一般的にこの状態から使用することが多いと思う。

タイムは35秒95。

使いこんだWindowsだとこんなもんでは収まらない気もするが、ま、こんなもんである。

次はスリープ状態のVAIO TypeG。

使いこむと著しく不安定になったりするが、まっさらなのでタイムも期待できる。

13秒20。

おぉ〜、すごい。

こんなにサクサク動くWindowsひさしぶりに見た気がする。

そして真打のiPad。

7秒35。

ブッチギリ。これなら暑さで沸騰した脳みそでも何とか本来の目的を保持しているってもんである。

ちなみにこれはスリープ復帰時のロックを外す動作もしているのでもう少し早いかも。

このようにWebブラウジングに関してはiPad完勝である。

いや、起動時間だけで全てが決まるわけでもないと思うが一事が万事、
ハードウェアスペックの割にはサクサク動く。

このサクサク感が道具としては重要だと思う。

確かにFlashが使えないのは問題があるし、ジョブスの発言は単なる言い訳にしか聞こえないが
Flashは大抵見栄えのために使っている場合が多く、なくても得られる情報に差が出る
機会は少ないような気がする。

茶の間で調べものって、「今テレビに出てきた俳優さんって、なんかの映画に出ていなかったっけ」とか
「第一次大戦っていつ始まったんだっけ」など、会話の中で疑問に思ったことが多い。

ということは調べた結果を会話していた人にも見せることになるが、大抵会話している人って
テーブルなどを囲んでいるので正面にいたり斜め前に90度回転した状態でいる。

その人にノートPCの画面を見せるには一度持ち上げてPCを回転させないといけない。

そしてその時には自分は画面が見られない。

見せている人がPC操作できなかったりすると横から手を出し、画面を覗き込みながら
「ほらね」などと言いながら操作するはめになる。

ハードディスクの入ったPCを動かすのには気も使うし、めんどくさいし、会話も途切れがち。

こんな時、視野角が広く大きな画面を持ち角度を変えるだけで上下が入れ替わるiPadは
とてもスムースに会話がつながるし、意識の共有もしやすい。

地図なんか見る時も同時にみんなで見ることができる。

どこからでも操作ができる。

まるで机の上に大きな紙の地図を広げているように使えるのである。

この辺がスレートデバイスの優れているところだと思う。

たしかにiPadは大きなiPhoneであるがこの大きさがコミュニケーションの形に大きな違いをもたらす。

スマートフォンがその画面を通してネットワークの先にいる人たちとのコミュニケーションを手助け
してくれるのに対しiPadはiPadの画面を通し周りの人とのコミュニケーションを手助けしてくれる。

これはiPadの主要使用目的であるフォトストレージとして使ったときにも言える。

iPhoneがちょっと時間ができたとき、中に入れたお気に入りの写真を一人で見るのに適しているのに対し
iPadは周りの人と会話をしながら写真を見るときに向いている。

このように今までにないコミュニケーション形態を持った電子デバイスとして将来新しいジャンルを
築いていくのではないかと期待している。

・・・でもiPhoneも欲しい。

(注) iPadの試作機をジョブスから見せられたアラン・ケイが「おぉ〜」と雄叫びを上げたらしい。

    真偽の程は不明だが、ホントだとするとジョブスの得意満面の顔が眼に浮かぶようである。