塩尻峠越え



不順な天候が続く今年の夏。

それでも我が家の掟は果たさなくてなりません。

はい、新しい自転車を買ってもらった年の夏には、自転車で塩尻峠を越えて
諏訪湖まで往復しなければならないのです。

5月の連休前にGIANTのXTC 24を買ってもらいニコニコの息子Bですが、よもや
このような試練が待ちかまえていようとは、知らぬが仏の何とかです。


このような試練が待ちかまえているなど、夢想だにせず喜ぶ息子B。

ところで、ここで白状してしまいますが、じつは・・・

トオチャンも新しい自転車をこっそり入手していたのです。

実は愛車であるTREKのマウンテンバイクについているフロントフォークのステアリングコラムに
クラックが入ってまして、大事にならないうちにフロントフォークを交換しようと、お小遣いを
貯めていたんです。

そんなおり、何気なしにWEBを見ていたら、シングルスピードのシクロクロス車の完成車が
あるじゃありませんか。

http://www.riteway-jp.com/bicycle/felt/9498194.html

今まで自転車のトラブルで一番多かったのがチェーントラブル。
ディレーラー(変速機)の調整不足でも起こるんですが、自転車の変速機の構造上
チェーンには余裕があり、それをリアディレーラーのチェーンテンショナー機構で常に張った
状態にしています。

そのため、大きな衝撃が加わるとチェーンが上下に大きく暴れ、チェーンステイをたたいたり、
チェーンが外れるといったトラブルが起こります。

その他リアディレーラー自体も下に大きく張り出しているので、林道やシングルトラックでは破損しやすいもの。

これがいやでフロントシングルにしてロード用リアディレーラーを付けようかなどと考えていたんですが
そんなところへMTBの父ゲイリー・フィッシャーがサイクルスポーツ紙で日本にシングルスピードMTB、
Rig」を紹介しました。

思わず「これだぁ〜、これが欲しかったんだぁ〜」と叫んだんですが、変速機なしのMTBぃ〜。

はたしてヘタレなトオチャンがギア比1:2.0くらいで山を走れるのか?
いや、それ以前にトオチャンの自転車ツーリングはターマックメイン、時々林道やシングルトラック、
担ぎも。なので舗装道路がほぼ90%を占めます。

そんなツーリングにシングルスピードMTBが向いているのか?

等々、悩みまくり、結局お蔵入り。

一応ピストベースも考えたんですが、グラベルをあまり気を遣わず走りたいし、
タイヤ関係のトラブルを減らしたいしで、ある程度太いタイヤ、出来れば700x35c
を履きたいとなるとボツ。
それに固定ギアなんて踏めねーし。


山に入らなくてもこんな道がすぐに現れる。

シングルスピードのツーリング車なんて無理だよね。そう、あきらめていました。

それがシングルスピードのシクロクロス車FELT Breedの出現で一気に現実味を帯びたんです。

シクロベースならば元々が未舗装路(本来の目的から考えると道じゃないかも)を
走ることを考えられているので太めのタイヤを履けますし、ブレーキもサイドプルじゃなくて
カンチブレーキが使える。

また、シングルスピードMTBに比べ700cタイヤが使えるのでよりハイスピードに対応できます。

ドロップバーが使えるのもポイントが高い。
トオチャンは元々ローディーで、MTBに乗り始めたのはつい最近。
なので、ドロップバーの方がしっくり来ます。
長時間乗る自転車は、やはりドロップバー。

それに、シクロクロスは競技中に担ぎもあるので、担ぎやすいようにトップチューブの下側が
扁平加工されて担いだとき痛くないようになっています。

と、何から何まで理想的なスペック。

価格も、思いっきりニッチなカテゴリーのせいか、はたまたディレーラー等の金のかかるパーツが
一切いらないせいなのか、7005アルミダブルバテッドのフレームやカーボンフォーク、FSAゴッサマプロ
クランクを使っている割には破格の値段。
これなら高級フロントフォークより安い。

ということで、有り金はたいて息子A、Bが夏休みに入る前に、近くの自転車屋に発注。
在庫が一杯で輸入元が早く捌けさせたかったのかは分かりませんが、翌日速攻で納車になり、
新しい自転車を手に入れてしまったトオチャンも掟を果たさなくてはならなくなりました。

シングルスピードで峠越えェ〜。
Breedのギアはフロント36T、リア16Tで1:2.25。
このギア比は変速機なしの28型ママチャリとほぼ一緒。
ちなみに三段変速の28型ママチャリの2速とほぼ一緒。
タイヤ直径も28型ママチャリとほぼ一緒。

・・・てことは、早い話がドロップハンドルのママチャリか。

ん〜、大丈夫か。これで峠を越えられるのか?
様々な思いを胸に前日の夜は更けていきました。



一夜明けて8月3日朝6時。

空一面の雲でいまいち良い天気とはいえませんが、雨の心配はなさそう。

いつもより早起きして、いつもより多めの朝食をとり、出発です。

朝の涼しい空気の中、一路峠の麓を目指します。

途中にあるセブン・イレブンで食料調達。
団子やら、ようかんやらを買い込みます。


今回主役の息子B、小学一年生


今回は脇役の息子A、小学五年生


影の主役FELT Breed、買いたてホヤホヤ

セブン・イレブンを後に先へ進みます。

しばらく行くと永福寺があり、ここの前で一休み。

永福寺を過ぎると、柿沢集落に入り、道はいよいよ本格的な上り坂になります。

集落の中を一直線に登る坂道を一生懸命登る息子B。

でもすぐに疲れちゃいます。

一休みしたら先を急ぎます。
柿沢集落を抜けると高速道路の上を渡る高架を渡ります。

ここでも一休み。
腹ごしらえと、カアチャンに定時連絡。

道はいよいよ本格的な峠道に。

昨日の雨でまだ路面が濡れ、滑りやすいです。


ちなみに、余裕の息子A(おまけ)

途中休み休み高度を上げていくと、

超ゲキ坂が出現。

当然息子Bは押して登ります。
しょうがねえのでトオチャンも押して登ります。

そしてとうとう塩尻峠到着。

セブン・イレブンで買ってきた団子を食べます。
やっぱ峠は団子さね。

団子で栄養補給をしたら一気の下り。

下り坂を下りきると石船観音の水場があります。

ここで水を補給して、岡谷市内に突入。

街中を行き交う、小学生達にガンをくれながらセブンイレブンに到着した息子A、B。
アイスを食べてほてった身体をクールダウン。

そして、目的地の諏訪湖を目指します。


鼻くそ掘ってる息子B(主役)

ついに到着ぅ〜。


余裕の息子A(おまけ)


影の主役、FELT Breed

一休みしたら暑くならないうちに今来た道を引き返します。

天気もよくなり暑くなってきた岡谷市内を、がに股気味のオッさんのりで行く
息子B。

峠が近づき、12%のゲキ坂にたまらず押す息子B。

背後に今までいた諏訪湖と岡谷の町並みが広がります。

来るときにも寄った石船観音で一休み。

頭から水をかぶってこれからの登りに備えます。

ここからの登りは傾斜がきつく、乗って登るのは小学生にはきついので
押して登ります。

トオチャンも渋々押して登ります。

途中何回か休みながら峠を目指します。

ウェダーインゼリーで最後のエネルギー補給。

そして峠到着。

今上ってきた道を見ながらガッツポーズ(?)を決める息子B。

後は下るだけなので、こがなくてもうちまで着きます。

心なしか顔も笑顔に。

いつもの見慣れた道に出ると、安堵感一杯。

気を引き締めお家を目指します。



それから数日が過ぎ、トオチャンの実家に帰省する日が来ました。

ここ数年、息子Aと一緒に自転車で帰省しているんですが、今年はもちろんFELT Breed。

二つの峠越えを無事こなし、

シングルスピードツーリングバイクの可能性を感じさせてくれました。


林道の上り坂を必死に押す息子A(おまけ)

いまだにギア比とか、各種パーツ、装備といった点で検討することはいっぱいありますが
シンプルで軽く、トラブルの可能性の少ないシングルスピードはツーリングに向いているのでは
ないかと改めて感じています。

下り坂で無理して重いギヤを踏まず脚の回復をはかり、きつい登りは降りて押す。
けしてタイムを競うのではなく、通る道を楽しむツーリングこそシングルスピードが向いているのでは
無いかと感じた夏でした。

・・・やはり影の主役はシングルスピード