50mm F1.4
え〜、あちこちで同じタイトルのBlog書いてるような気がしましますが、タイトルが一緒の記事を
載せてはいけないという発行規則はないのでこのまま行ってみようかと思います。
昨年9月に発表されてからこれは買わなければ男が廃ると、手ぐすね引いていたNikon様の新しい50mm。
完全新設計、デジタル対応での発売です。
完全新設計といってもこのクラスの50mmはすでに完成しきっている感があり、レンズ構成は変形ガウスタイプです。
標準レンズによく使われるタイプとしてトリプレットやテッサーがありますが、F2より明るいレンズとなると、前後対象形の
ガウスタイプがよく使われるようです。。
興味ないかと思いますが、お約束で標準レンズで使われるレンズ構成をざっと見ていこうかと思います。
最初はピンホールから始まったカメラ用レンズ。
しかしピンホールはさすがに暗いというので凸レンズ一枚を使うようになります。
この凸レンズ一枚、やってみると分かりますが周辺が流れる上にどうしても全体的に甘い。
これはレンズの色収差によるものが大きく屈折率の違う凸レンズと凹レンズを使うことで消すことができます。
これがダブルメニスカスとかダブレットと呼ばれる単玉。
今でも写るんですとかトイカメラで使われます。
ところで、写真用レンズにはいわゆるザイデルの5収差という球面収差、コマ収差、非点収差、
歪曲収差、像面湾曲があります。これを少ないレンズで効果的に除去したのがトリプレットというタイプです。
トリプレットは像面湾曲や球面収差が多少存在していたため、画面の平坦性が悪く、周辺画質を向上さ
せることが難しかったため、この後のテッサータイプに主力を譲っていきます。
ところが最近また最新のコンピュータ設計や、高屈折率ガラス、非球面レンズの採用でトリプレットが
携帯カメラやWEBカメラなどの単焦点レンズの主流になっているみたいです。
また性能もF3.5程度なら十分な描写力を持っています。
テッサーはトリプレットの後ろの凸レンズを二枚貼り合わせの色消しレンズにしたもので戦前のレンズ
の主流です。
明るいレンズを作るには前後対象形で画面の平坦性に勝るガウスタイプが優れているのですが、
ガウスタイプは4群レンズ構成のため空気との境界面が8面あり、効果的なコーティング技術が開発される
までは3群レンズ構成のテッサーと比べコントラストが低くなります。
そのためコントラストのテッサー、画面平坦性のプラナー(ガウスタイプ)と言われていました。
F2以上の明るさのレンズを作ろうとすると前後対象形で収差が打ち消し合い、画像の平坦性に
優れるガウスタイプが必要になってきます。
ちょうどコーティング技術の進歩もあり、透過率が一桁上がるとレンズの内面反射も無視できるくら
いになりガウスタイプのメリットが光ってきます。
さて、こうしてガウスタイプを使ったF1.4より明るいレンズが製造されるようになってくるのですが、
一眼レフ用レンズとなるとひとつ問題があります。バックフォーカスです。
レンズ後玉の後ろにミラーが存在する一眼レフではレンズ後面からフィルム面まで50mm近くあり
絞り位置から後ろに2群のレンズがあるガウスタイプでは十分なバックフォーカスを確保することが
できません。
そこでバックフォーカスを確保するために前の合わせ凹レンズの合わせ面を剥がし、不足したパワーを
最後部に凸レンズを入れることで補いバックフォーカスを確保した変形ガウスタイプが登場しました。
そして現在の一眼レフ用標準レンズはほぼ全てこのタイプになっています。
で、このAF-S NIKKOR 50mm F1.4Gですが新設計のレンズです。
今までの変形ガウスタイプの後ろにさらにもう一枚凸レンズを入れた形になっています。
各種ズームレンズの開発でコーティング技術も進み境界面の増加は無視できるように
なったので、さらに良好に各収差を補正しようとしたのだと思います。
撮影してみて、確かにシャープになっていると思いますが、やや湾曲収差が大きいように思いました。
で、それはさておき、新しいレンズです。うれしいんです。
早速箱から出してみます。
最近のNikkorスタンダードといったところ。
フォーカシングリングもちょっとがさつきがありますが、適度なトルクがあり、超音波モータ内蔵
レンズの中ではよい感じだともいます。
D700に装着したところ。ん〜、かっこいい。やっぱバランスがいいです。
持った感じも重すぎず軽すぎずでなかなか。
やっぱ標準レンズはバランスが大切。
表面処理もなかなか高級感があってよいです。
またマウント基部にはゴムのシーリングリングが付いていて安心感が。
ところで、なぜか手元にCanon EF 50mm F1.4があるので比べてみました。
直径も長さもほぼ一緒。
レンズのコーティングは・・・、NIKKORの方が抜けが良さそうに見えますがたぶん気のせい。
ピントリングを無限遠から最短45cmまで動かしてみました。
どちらのレンズも回転角180°で一緒。この辺はスタンダードな仕様です。
ピントリングの動きはCanonの方がガサツキがありガタも多いです。
でもCanonのこのレンズ、買ってからずいぶんたつので最近のものはもっといいかもしれません。
ピントリングの回転角が同じ180°なのに対し小窓から見える距離表示リングはCanonの方が
回転角が少ないです。
この辺がNIKKORの合焦速度が遅い原因かもしれません。
設計フィロソフィーの違いなんでしょうけど。
レンズを繰り出していった時、EFの全長が変わるのに対しNIKKORは全長が変わりません。
保護フィルタを付けたとき可動部に雨やホコリを入れないようにと考えた構造ではないかと思います。
マウント部から見たところ。
ちまた、及びCanonが言っているほど後玉径に差がありません。
50mmはこんなもん、といわれればこんなもんですが、EFマウントは接点がマウント面を向いていて
幅が広いのに対し、Fマウントは接点がマウントと直角方向に向いているのでマウントに占める
幅が狭いのが理由だと思います。
まあ、EFマウントの場合、50mm F1.2に見られるようにレンズに接点を埋め込むようにすれば
後玉径を大きくできますがあくまでもイレギュラーな使い方。
ということでEFマウントとFマウント、それほど差ねーじゃん。
さあ、肝心の写りはどうでしょう。
といってもこのクラスのレンズは上記の通り十分熟成されたレンズなので、よほどへんてこりんな
設計をしない限り、悪くはならないと思います。
はい、十分満足しています。
EF 50mmと比べてどうよと思っているあなた、残念ながら今うちにEOSがないので比べられませ〜ん。
(なんでレンズだけ持ってんだ。)