『ηなのに夢のよう』から


苛立たしいのも、恐ろしいのも、寂しいのも、なんとかできる。

きっと解決ができる。

けれども、悲しみだけは、解決がない。

悲しいというのは、解決がない、という意味なのだ。


 最初に彼の小説を手にしたのがいつだったか、もう忘れるくらい時間が経ってしまったけれど、相変わらず森博嗣さんのミステリは欠かさずに読んでいる。俗に理系文庫と言われ、理学部、工学部の学生や教授たちに大人気を博しているこれらのシリーズは実に面白い。かくいう私も正真正銘の理系である。

 森さんの小説には様々なシリーズがあるが、ギリシャ文字をモチーフにしたこのシリーズの最新刊、『ηなのに夢のよう』は相変わらずだった。毎度毎度いろんな角度からインスパイアしてくれるこれらのシリーズ。今回は冒頭のモノローグが非常に心に残った。

 あらすじとか登場人物だとか、その辺を書き出すと軽く2000文字を越えそうなので、ここには書かない。興味のある方はWikipediaを覗いてたもれ。URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E5%8D%9A%E5%97%A3

 

 人間にはいろいろな感情があるが、ここに書いてある通り、悲しみは確かに解決がない。いやひとつあるか。
このモノローグは、当たり前の話なんだけど、非常に心に残っている。それは多分、自分が人の死に臨む機会が増えてきたからだろう。自分の中での解決手法も確立はしているが、この原則に変化はない。

 

 だから多分、これは『定理』なんだろう。