飛べない鳥

えっと、先月原稿さぼっちゃったし「今月は書かないとなー」とか思っていたんですが、ん〜、書くことがない!!。

このところ身の回りでこれといったこと起こらないし、物欲はいろいろあるんだけどなんにも買ってないし・・・、
あ、春にT-100買ったし、夏にはケータイ買いましたけどね。

で、たまには違ったテイストで行ってみようかと。

みなさんは恐竜って知っていますよね。男の子なら一度や二度はあこがれたことがあると思います。女性の方
でも好きな方、いらっしゃいますよね。
その恐竜なんですが、現在では恐竜が鳥に進化したというのが通説になっています。
ところが実際にはいろいろな説があり、その中の一つにBCF(Birds Came First)という理論があります。

このBCF理論とは「大型獣脚類恐竜のほとんどは、樹上で生活し飛ぶことの出来た鳥のような小型の爬虫
類(これはdinosaursとbirdsを組み合わせてdino-birdsダイノバードと呼ばれます)を祖先として飛ばない道を
選んだ子孫である」というものなんです。

ところで、現在主流を占めている「鳥、恐竜進化説」ですがこの考え方の根拠となっているのは

(1) 恐竜と鳥は体の構造がよく似ている。

(2) 恐竜は進化が進むにつれ現在生息している鳥の要素をより多く持つようになる。

(3) 過去にはアルカエオプテリクス(始祖鳥)や最近の中華竜鳥、モノニクスなど、羽毛を持った恐竜の化石が出
  土している。

などで、その発生シナリオは、白亜紀に生息していた小型の獣脚類の中で、主に昆虫を補食しているものの中
から昆虫を追う時手足をばたつかせるものが出現し、やがて前肢が羽に進化したというものです。

ところで、過去にアルカエオプテリクスが発見された時(1861年)一度は主流を占めたこの「鳥、恐竜進化説」は「鎖
骨消失問題」で否定されたことがあるんです。
しかし最近になって獣脚類の中に鎖骨を持つものがいることが明らかになると、主流を占めるようになり現在に至
っています。
ちなみに「鎖骨消失問題」とは現在発見されている恐竜のほとんどは鎖骨が退化消失していているので、鎖骨が
大きくなりさらには左右で融合している現在の鳥の祖先ではあり得ないというものです。

この「鎖骨消失問題」をとりあえずクリアし、主流となった「鳥、恐竜進化説」ですが、実際にはまだまだ多くの問題
を含んでいます。

まず一番に考えられるのは鳥の祖先といわれているドロマエオサウルス類、有名どころではディノニクスとかベロキラプ
トルですが、ほんとに飛んだのか?ということです。
ベロキラプトル類は小型とはいえ現在の鳥と比べるとまだまだ大きい方です。
その上どう見ても空気力学的に飛べる形態とは思えません。
そこら辺にいるトカゲの方がよっぽど空気力学的には洗練されていると思われます。

この縦に長く横に薄いプロフィール。

BAEライトニングみたいといえば言えなくもありませんが、このまま羽ばたいて地上を離れたとは考えにくい。

トカゲの横に広いプロフィールの方がずっと空力的に優れていると思われます。

第二に、羽毛ですが一度も飛んだことのない恐竜がどのようにして羽毛を発達させたのでしょうか?
今でも飛ぶことをやめた鳥たちは段階的に羽毛を毛へと変化させています。
この問いに対する答えはいまだに決定的なものはありません。

第三に、一般的に進化に伴い大型化する恐竜がなぜ小型化して鳥になったかです。
陸生の脊椎動物は生息地の制約や食糧不足などの環境的圧迫がないと一般に大型化する傾向があります。
獣脚類が大空に飛び立つのに必要なサイズまで小型化するための、長期間の環境的制約とはなんだったので
しょうか?

他にも、ドロマエオサウルス類の前肢は、鳥が翼を折りたたむように曲げることが出来ますが、地上生活をし、それ
ほど大きくない前肢を持つドロマエオサウルス類がなぜ前肢を折りたたまなければいけなかったのか?

さらに有名なベロキラプトルの後肢のかぎ爪も、一度飛行能力を身につけ、獲物を捕らえるために発達したかぎ
爪が、その後、地上生活に戻った時に保護しようと持ち上げて走っているうち、折りたためるようになったと考えた
方がスッキリします。

また、二足歩行の恐竜たちは進化が進むとともに前肢を退化させます。二足歩行とともに手を進化させていく哺
乳類とは好対照です。

これも、前肢を飛ぶために使っていたダイノバードが地上生活と共に必要なくなった前肢を退化させていくと考える
と良いのではないかと。


そこでBCF理論ですが、新生代の鳥類が中生代の恐竜の祖先ではあり得ず、不可能に思われます。

でもね、現在鳥に分類されているアルカエオプテリクス(始祖鳥)は大半の恐竜より前の時代(ジュラ紀後期)に存在
していたんです。
これより以前、恐竜が地球に出現する時まで遡り、より原始的なダイノバードから分岐し、地上生活に適応、さら
に飛ぶための高い代謝能力を体を大きくする方向に進化させていったのが恐竜なのではないでしょうか。
鳥が先にいたというのは現在生息するような鳥が恐竜になったというのではなく、鳥が進化し、飛ぶ能力を身につけ
ていく過程で亜種としての恐竜が発生したと考えると、あながち不可能な仮説とはいえなくなってきます。

木に登ることが出来るトカゲのような小型の爬虫類。ペルム紀から三畳紀にかけて生息した。

樹上から滑空していたと思われ、表皮には原羽毛があったかもしれない。

ロンギスクアマ、翼竜、恐竜の祖先。

原生のワニや鳥などの共通の祖先で、恐竜など大半の槽歯目の祖先。

前肢と後肢はほぼ同じ長さで半直立の姿勢がとれた。

恐竜と鳥の共通の祖先。ほぼ直立出来た。

頸椎はS時カーブを描き、前腕や脚に羽毛が生える。

前肢、後肢とも指は5本で第一指が残る4本と向かい合う構造をしている。

尾には原羽毛がふさ毛のように横に生える。

鳥板目の恐竜はこの辺かもう少し前で分岐していると思われる。

獣脚類の祖先。ヘレラサウルス類、ラゴスクス類、鳥類の共通の祖先。

前肢の羽毛のふさ毛は長い初列風切羽に変化し、翼らしくなる。

手の第5指は退縮して翼のスペースになる。

ケラトサウルスと鳥類の共通の祖先。

手の第5指は退化、第四指は退縮して外からは見えなくなる。

足は第1指が側方に移り、残る3本と向かい合わせに出来る。

カルノサウルス類や鳥類の共通の祖先。

手の指は3本に減少し、第一指は残る2本と向かい合わせに出来なくなる。

尾が硬直しアルカエオプテリクスのようにたっぷりした羽毛に覆われる。

足は第1指が残る3本とは逆向きになって向かい合う。

マニラプトル類の祖先。翼を折りたためるようになるが、アルカエオプテリクスと同じように3本のかぎ爪が残る。

ここから多種多様な獣脚類が進化する。

ドロマエオサウルス類の祖先。

ディノニクス、ベロキラプトルの祖先でもある。

現在でも鳥は、飛ぶ必要が無くなるとすぐに飛ぶのをやめる傾向があります。ダチョウしかり、エミューしかり、ヤンバル
クイナや鶏もほぼ飛べません。
これが現在の鳥より飛行能力の劣るダイノバードだったら。
今より頻繁に飛ぶことをあきらめる種がいても不思議ではありません。

そして当時は飛ばない鳥の天敵、哺乳類が今のように発達していなかったことも、飛ぶことをあきらめたダイノバード
たちが地上生活に適応していくのに一役買ったのかもしれません。

もっというと、ダイノバードが鳥に進化していく過程で次々に地上の送り出されていたのが恐竜で、体を大きくしたり、
特別な器官を発達させたりと進化の限界まで達し種が絶滅しても次の種が台頭してくる。
それが中生代、恐竜の時代だったのではないでしょうか。
そして、白亜紀後期から新生代に入り発達した哺乳類の台頭とともに、地上生活しかできない鳥たちが生きる場
所を無くし、それとともに恐竜もいなくなっていった。
そんな考え方も出来るような気がします。

ただ、このBCF理論。致命的な欠陥がありまして、今まで熱く語ってきたダイノバードの化石が見つかっていないん
です。ダイノバードは小さく、化石になりにくいので今後とも見つけるのは困難だと思われます。
ますます実証するのは難しいでしょう。

でも私は、恐竜とは鳥が飛翔能力を身につけていく課程で派生し続けた地上生活に順応した飛べない鳥だと思
うのです。

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参考文献

George Olshevsky's "The Birds Came First:A Scenario for avian origins and early evolution".
Luis Rey's Illustration, and Wikipedia.