去る者と残される者の想い
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「ねえセツミ、一つ質問していい?」
「…うん」
「もし、あなたのとても親しい人が、少しずつ弱っていったとして。
あなたは傍で、ずっとその姿を見ていたい?
それとも、自分の知らぬ間に、いつのまにか亡くなっていて欲しい?」
わたしは、その質問の意味を考える。
そして、自分なりに真剣に考えてから、
「わからない」
これが正直な気持ちだった。
「私は、ずっと傍に居てあげたいと思うわ。
でも、自分が去る立場ならば、逆。
傍には、誰も居て欲しくない」
「…矛盾しているわ」
「その通りよ」
「去る者と、残される者は、決して交わることはないのよ」
自分の痛みは耐えれても、人の痛みには耐えれない。
そういうことを言いたいのだろうか?
だから千尋さんも、海で会った親友の人も避けて。
では、どうしてわたしは、ここに居るのだろう?
何故、わたしは選ばれたのだろうか?
わたしならば、姫子さんは平気だと言いたいのだろうか。
「これはね。穴に落ちて、初めて気づくことよ。
だけど、どんなに私が、ここに穴があるからと声を上げても。
穴に落ちた者の声は、地上を歩いている者には届かない」
それが理由?
じゃあわたしも、同じように落ちた者だから、その声が届くと言いたいのだろうか。
「あなたは違うわよ」
「えっ」
「まだ、落ちかけね…這い上がれる可能性がある」
「………………」
「もし無理だった時は?」
「それは…誰もが自分で考えることよ」
ならば、今の状況は。姫子さんなりに考えた結果なのだろうか?
穴に落ちたから祈りを止め、呪いへと変わったのだろうか。
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