諏訪大社詣 その二

さて、前回たどり着いた塩尻峠から岡谷を目指し道を下り始めます。

ここ、塩尻峠は比較的緩やかな塩尻側に比べ岡谷側は急角度の山道です。自転車だと下りは怖くて
乗っていられないほど。この急角度の下り坂を駆けおりるようにして下っていきます。

「おい息子A、ひざ大丈夫?」

どうせこいつ、ひざがガクガクになっているに違いない。そう思い話しかけると意外や意外、

「ん!? 平気だよ。」

余裕の笑顔で答えます。

あっれ〜、変だなー。確かこの辺で泣きが入るはずなんだけど。こいつもしかして、さっきの小休止だけで
体力を回復させたのかぁぁぁ。

こうなってくるとトオチャンの方が俄然不利です。まだまだ体力に余裕があるトオチャンですが、ここまで歩
いた疲れは確実に蓄積されています。

そういえばさっきから、ふくらはぎのあたりに張ったような感覚が・・・。

これはまずい。何とか悟られないようにしなければ。

急な山道を降りきると鳴沢清水という水場があります。

去年の夏、自転車で自宅から諏訪湖まで往復した時に見つけて以来、息子Aのお気に入りの水場。こ
こで軽くなった水筒に水を補給します。

岡谷ICを横目に見ながら先を急ぐことに。ここからも国道20号線のやや北側を走る旧中山道をたどりま
す。

交通量も少なく、旧史跡が所々にあって歩いていても飽きません。

所々にある史跡で一休みするたび元気になって来る息子Aに比べ、蓄積された疲労がそろそろピークに
達しようとするトオチャン。ますますヘロヘロになっていきます。

この道もやがて国道20号線と合流して車が行き交う騒がしい道を行くことに。

この辺は歩いていても楽しくないのでとっとと諏訪大社を目指します。

そしてとうとう諏訪大社到着。

「やったー。」

と元気に喜ぶ息子A。

「やっと着いたー。」

と青息吐息のトオチャン。

しかし、ここで弱みを見せるわけにはいきません。

老体に鞭を打って最後の階段を上りお参りをします。

お参りが済んだら木陰のベンチで一休み。

残しておいたようかんをほおばります。

時計を見ると時間はもう4時を過ぎ。

「さあ、後はお風呂に入って帰ろうか。」

自宅を出る前に前もって調べておいた菅野湯という銭湯で一汗流します。

ここは最近ある小ジャレた日帰り温泉ではなく、番台のある昔ながらの銭湯で、入浴料は大人220円、
子供110円。

利用客も観光で訪れたような人はなく、地元から来たと思われる人たちばかりです。

湯船は真ん中に丸いものが一つ。

疲れた体をのんびりと休ませます。

小一時間ほどのんびりしたらJR下諏訪駅を目指して歩きます。

駅には部活帰りらしい高校生や出張帰りらしいサラリーマンがちらほら。

時刻表を確かめてなかったので、見ると塩尻方面は出たばかり。1時間ほど待たなければなりません。

ベンチに座って待っていると、疲れがピークに達しているトオチャンは息子Aに対する意地なんてどこへや
ら、睡魔に勝てずついウトウト。

風呂に入ってすっかり回復した息子Aは元気いっぱいに走り回ります。


こんな二人を優しく包み込むように下諏訪の町は静かに暮れていくのでした。

・・・静かではないか。